夫婦の間に子供が生まれた場合には色々な負担が増えてくるのですが、金銭面の負担で代表的なものとして挙げられているのが養育費です。
これは子供が成人するまでにかかってくる費用の事を指しており、子供を作る事にした場合にはこの費用を生活費の中に含めて人生設計をする必要が出てきます。
そこで今回は子供を育てる上でどの程度の養育費がかかってくるのか、また万が一離婚してしまった場合の養育費の行方などを紹介していきます。
養育費の項目
まず始めにそもそも養育費の内容としては、大きく分けると「生活費」と「教育費」の2種類が主な費用となっています。
それぞれに掛かるおおよその金額を解説していきます。
養育費の項目①:生活費(合計:1,600万円)
生活費とは名前の通り子供が日常生活を送る上で必要となってくる費用の事で、実際にどのような項目の費用がどの程度かかってくるのかという内訳を細かく紹介していきます。
今回は子供を20歳まで育てるのにおおよそいくら生活費が掛かるかの紹介になります!
食費 約700万円
子供の食事に関しては乳幼児の際には離乳食として大人とは別の食事を用意する必要がありますし、成長するに従ってお弁当代金や給食代金などが別途で発生するようになってきます。
さらに子供の消費カロリーは大人よりも高くなっているため、一定年齢の場合はおやつなどの間食が必要になっています。
衣料費 約150万円
子供が成長するにつれて服のサイズがどんどん変わっていくことなどから、定期的な買い替えが必要であるため費用としてかかりやすくなっています。
子供が女の子の場合は、ついついオシャレしたくなるため、男の子より高くなる傾向にあります。
医療費・理容費 約200万円
子供の免疫力は大人と比較するととても弱いため、何らかの疾患にかかってしまう事が珍しくないため医療費がかかりやすい傾向にあります。
特に集団生活の中で感染してしまうと言うケースも多く、感染していないと言う場合でも乳幼児の時期は予防接種や定期健診などで医療費がかかってきます。
また、自分たちで散髪できるという場合はそこまでかからないのですが、そうでなかった場合は成長期であったり新陳代謝が活発である事などから大人よりも短い周期で理容費がかかってくるとされています。
お小遣い 約450万円
この項目に関しては家庭環境によって異なってくる部分となっているのですが、子供がある程度自立してきた場合には年齢に応じて必要となるお小遣いを渡すと言う事があります。
子供の私物 約100万円
生活の中で必要とされているもの以外にも、雑費として子供専用の私物としておもちゃなどを購入する費用が必要になってきます。
成長に伴って必要となる私物は異なっていますし、かかってくる金額も成長に比例する傾向があるようです。
養育費の項目②:教育費(公立の場合)
教育機関には公立と私立があるのですが、まずは公立の場合はどのくらいの必要が必要になってくるのでしょうか。
公立幼稚園 3年間約70万円
公立は私立と違って都道府県や市町村が運営しているため、入園料や保育料をそちらが負担するようになっています。
ほかにも受験の必要性がないと言うところから、受験料がかからないなどの理由が私立よりも安くなっているポイントです。
公立小学校 6年間約180万円
こちらも幼稚園同様に都道府県や市町村が運営しているため、私立では支払う必要のある授業料が6年間免除されています。
また義務教育であるため公立の場合は義務的な意味でも安くなっている部分があるようです。
公立中学校 3年間約140万円
小学校同様義務教育である中学校は授業料が免除されているので安くなっていますが、私立と比較すると高校受験に関する費用がかかったり給食費用がかかると言う場合もあります。
公立高校 3年間約120万円
義務教育から開放された高校では公立の場合、所得制限による授業料無償化制度や奨学金給付などの制度が利用する事ができるようになっています。
これは公立限定なので、私立では利用できないというところから安くなっていると言われています。
国公立大 4年間約520万円
国立大学の場合は国が授業料を負担しているため、私立と比較するとトータル的に安く利用する事ができます。
特に専門学科の場合は国の助成金などが受けられる事から、私立よりも安くなっていると言うところが多いです。
養育費の項目②:教育費(私立の場合)
私立とは個人が設立した施設の事を指しており、受験に合格する事で入学する事ができます。
それを踏まえてどの程度の費用がかかってくるのかを紹介します。
私立幼稚園 3年間約160万円
公立と比較するとおよそ2倍近くの費用がかかってくるのですが、その理由としては受験費用がかかる事や入園料・保育料が負担としてかかってくる事が挙げられています。
私立小学校 6年間約900万円
こちらは公立のおよそ5倍なのですが、理由としては受験費用や授業料がかかる事、セキュリティ面などの設備が公立と比較すると充実している事などが挙げられています。
私立中学校 3年間約380万円
幼稚園や小学校同様の理由から授業料がかかってくるところが公立との違いではあるのですが、私立中学校は給食制度ではないためその分の費用が安くなっていると言う特徴もあります。
私立高校 3年間約280万円
私立高校は中学校からエスカレーター式で進学すると言う人も多く受験費用がかからないと言うメリットがある反面、公立よりも設備が充実していたり教師のサポートが充実していると言う面で費用がかかりやすくなっています。
短大 2年間約380万円
短大の場合は専門学科が多いと言うところから学科によって費用が異なっており、国立大学と比較すると授業料は大きく変わりませんが施設設備費用などの負担がかかるという違いがあります。
私立大学(文系) 4年間約690万円
文系の私立大学は国立大学と比較すると高額ではありますが、施設設備費用は理系と比較すると底まで必要ないということから安くなっている事が多いです。
私立大学(理系) 4年間約800万円
理系の私立大学の場合は授業料は勿論ですが施設設備費用が高額となってしまうため、国立大学や文系の私立大学と比較すると最も高い費用がかかります。
離婚の際の養育費とは?
一般的に子供は夫婦揃って養育する事になっているのですが、何らかの理由によって夫婦が離婚してしまうと言う事もあります。
そして離婚する夫婦の間に未成年の子供がいる場合、その子供の親権・監護権を夫か妻のどちらかに決める必要があります。
では子供を育てる養育費に関してはどのようになっているのかと言うと、親権・監護権を持った親は持っていない親に対して自分が支払い分以外の養育費を請求する事ができるようになっており、請求された側は養育費の支払いの義務を背負う事になります。
と言うのも養育費の支払義務は、子供が最低限の生活ができるための扶養義務ではなくそれ以上の内容を含む「生活保持義務」であり、自分の生活を保持するのと同じ程度の生活を扶養を受ける者(子供)にも保持させる義務の事を指しています。
そのため、どんなに生活が苦しいと言っても親権・監護権を持っていない親は子供に対して養育費を払う必要があるため拒否する事は出来ませんし、親が権利を放棄したとしても子供自身が請求できる場合もあるのです。
注意点としてはあくまでも養育費は子供が受け取るべき費用であり、子供を育てている親が受け取るものではないと言う事です。また離婚の際に事前に取り決めていなかった場合でも後日改めて取り決める事ができるようになっていますし、何らかの理由で養育費の請求を放棄したとしても後日再度請求する事が可能となっています。
養育費の算定方法
どちらが養育費を支払うのかと言う取り決めをした後は、実際にどの程度の費用を支払うのかと言う部分を算定する必要があります。
養育費の算定の方法としては夫婦間で話し合いをして決める事もできますが、法的な効力を高めるためには家庭裁判所の調停・審判を利用して養育費の条件を定めることが必要になってきます。
そして実際に支払う金額に関してはある程度の養育費算定の目安として家庭裁判所がフォーマットを出しているため、そちらを参考にしながら決定していく事になります。
具体的なやり方としては支払う側と貰う側のそれぞれの基礎収入を認定し、支払う側・貰う側・子供のそれぞれの最低生活費を生活保護の水準などから認定します。
そして支払う側と貰う側の負担能力の有無を確認し、支払う側の基礎収入が最低生活費を下回っている場合は負担能力はないとされています。
さらに子供に充てられるべき生活費を支払う側の基礎収入と子供を含めた基礎収入の割合で案分し、最終的に支払う側の負担額が認定されると言う流れになっています。
ちなみにこれらの計算を自分たちだけで行うと言うのは非常に時間がかかってしまいますし、必要な資料も膨大な量になりがちです。だからこそ家庭裁判所が出しているフォーマットを参考にすることによってスムーズに計算する事ができるようになっているので、養育費を算定する場合には家庭裁判所のフォーマットを利用する事が推奨されています。
養育費はいつまで貰える?
まず養育費がいつからもらえるのかと言う部分に関しては、原則として請求した時点からもらえるようになっています。そのため請求する以前に遡って請求する事はできないようになっていますし、実は養育費を請求する事ができる期間というのは制限されています。
どういうことなのかと言うと「一般的な養育費」というのはあくまでも子供が成人する20歳までにかかってくる費用の事を指しているため、離婚をした場合であっても請求する事ができるのは子供が20歳になるまでと決まっています。
では子供が4年制の大学に進学したと言う場合は途中で支払いが終了してしまうのかと言うと原則としてはそのようになっているので、養育費の取り決めを行う際に大学卒業まで養育費をもらいたい旨を伝えておく必要があります。その上で支払う側が納得したのであれば例外として大学卒業まで支払ってもらうことが出来ます。
ただし支払う側が納得しなかったり支払わないとした場合は、第三者として裁判官の判断に委ねることになります。一般的に特別な事情がない限りは大学卒業まで養育費を認めてもらうことはできないとされているため、支払う側が納得しなかった場合は大学進学については自分たちで費用を捻出する覚悟をしておくことが大切です。
また養育費の支払いに関しては一括ではなく分割が基本となっており、一括での請求の強制はできないようになっているので注意が必要です。
養育費の増額はできる?
養育費を一度算定して決定した場合は一般的に増額する事はできないようになっているのですが、例えば子供が大病を患ってしまって多額の医療費がかかるようになってしまったり、進学に特別な費用が必要になってしまったなどの算定した頃とは事情が変わってしまったと言う場合には増額が認められる事があります。
ただしこれはあくまで主張して相手がそれを認めた場合であり、相手が認めなかった場合には家庭裁判所に対して申し立てを行って調停などを行う必要があります。そこで増額が決まればいいのですが、場合によっては増額が認められないと言う事もあるようです。
また増額ばかりではなく、場合によっては相手から減額を求められてしまうこともあります。これは支払う側が再婚をしたり子供が生まれた場合や、親権を持っている側が再婚して養育費を支払う人が増えた場合などが挙げられています。
この場合も当然話し合いをする必要があり、合意すれば実行されますがそうでなかった場合は増額の時と同じように家庭裁判所に話を持ち込まなければいけなくなります。
いずれの場合でも多少の事情では認められない事が多いですし、事情が変わったからと言って自動的に支払い金額が変更されるわけではないので必ずお互いに話し合いを設ける必要があります。この時当人同士だけでは話がまとまらないと言う事も多いので、弁護士などの専門家に相談して対応してもらうことがおすすめです。
養育費が支払われなくなったら?
離婚する際に養育費に関して取り決めを行っていたとしても、場合によっては養育費が支払われなくなってしまう場合があります。このような場合には家庭裁判所から支払いをするよう相手方に勧告や支払いをするよう命令してもらうことができます。
このことは履行勧告および履行命令と呼ばれているのですが、注意点としてこれらには強制力がないと言う点があります。履行命令の場合は勧告よりも少しは強制力はありますがほとんどないに等しいので、この時点では支払ってもらえないと言う事も少なくありません。
ではどうすればいいのかというと、履行勧告および履行命令でも支払いが行われないという時には強制執行を検討することができます。こちらも家庭裁判所に申請して実行してもらうことが出来るもののひとつで、強制執行をすることにより養育費の支払いをしっかり確保することができるようになります。
強制執行をすれば相手方の給与債権を差し押さえることができるようになり、その金額としては一般的な事例の場合は給与の4分の1までしか差し押さえることができませんが、養育費の場合は子供の生活や命に関わってくる重要な権利と認められている事から2分の1までの差し押さえが認められています。
ただし、強制執行をする場合は養育費について公正証書を取り交わしている場合などの記録が残っていないと難しくなりますし、相手の状況によっては回収が困難となる場合もあるようです。
親権者が再婚した場合は?
親権者が再婚した場合、まず前提条件として言われているのが再婚したとしても親権者の立場は変わらないと言う事です。
また、再婚したとしても子供の権利が消滅するわけではないので、養育費の支払いそのものに関しては特に大きな影響はないとされています。
ただし注意しておきたいのが子供と再婚相手が養子縁組などを組んでしまった場合で、養子縁組をしてしまうとそれまで法律的に親子関係がなかった2人に親子関係が発生してしまいます。それによって遺産などを相続させる事ができるようになるのですが、同時に養親となった再婚相手が第一次的な扶養義務を負うことになります。
そのため養子縁組をした時点で離婚した側は養育費の支払いの義務を解消される事になるため、支払いそのものが消失してしまうと言う事があります。消失しなかったとしても減額の対象となることは確実なので、その点を踏まえて養子縁組などを検討する必要があります。
離婚の際に養育費以外にお金を貰う方法
離婚した場合の養育費に関しては規定されている算定方法からお金の支払いが決定されるのですが、実は養育費以外にも子供に関連したお金を貰うことが出来るものとその方法がいくつかあります。
財産分与
財産分与にはいくつかの種類があり、その中のひとつに「扶養的財産分与」というものがあります。これは例えば専業主婦などの収入がない相手が子供の親権を勝ち取った場合に獲得する事ができるお金で、離婚後の生活困窮の可能性があると言う場合に財産分与のひとつとして請求する事ができます。
請求する際には財産分与の話し合いの段階で提案する必要があり、相手が応じる事で支払ってもらうことが出来ます。
慰謝料
離婚協議をする際、相手に不貞行為などの問題があった場合は慰謝料を請求する事ができます。この時に子供に対してというわけではないのですが、例えば生活費を入れなかったなど自分だけではなく子供の命にも危害が及ぶような行為をしていた場合は慰謝料と言う形で協議などの際に養育費とは別に請求すると言う事も可能です。
婚姻費用
婚姻費用とは夫婦が結婚生活を続けていくためにするためにかかるお金のことですが、子供がいる場合はその中に子供との生活費用も含まれてきます。
もし離婚前に別居していた場合には婚姻費用分担請求調停を請求する事で話し合いをすることができるので、その段階で必要な費用を提示・請求する事が必要です。
養育費をもらうには公正証書契約がおすすめ
養育費に関しては話し合いで合意して決めるのですが、合意書という形で書面に残したとしても相手が支払わなかった場合の強制力は家庭裁判所を通じてもそこまで強制力はないと言う問題があります。
そのため確実に養育費を支払ってもらうために必要となってくるのが公正証書です。公正証書とは公証役場で作成する事ができる公的な合意書の事であり、裁判をして判決をもらったのと同じ扱いとして利用する事ができます。
そのため通常の合意書と比較すると養育費が継続して支払われる安全性を高めてくれますし、万が一養育費の支払いが滞ってしまった場合にはわざわざ裁判をしなくても簡易的に相手に対して財産の差し押さえなどの強制執行が可能です。
ほかにも調停を経由して作成する事ができる調停証書も同様の効果はありますが、公正証書は夫婦間の話し合いだけでも作成する事ができるようになっているので用意しやすいと言うメリットが魅力です。
まとめ
養育費とは子供が両親に育ててもらうための大切な費用であり、例え両親が離婚してしまっても変わらず受け取る事ができる権利として非常に重要なものとなっています。
そのため両親は子供を産んだ責任と義務と言う形で背負う事になっていますし、どのような形になってしまってもそれは変わらず継続されていきます。
だからこそ夫婦は子供が20歳になるまで養育していくと言う事を当然の義務として、大切に育ていける環境を整える事が大切です。
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